蝉の記憶

 

露降りる 高原の朝・・・・ 

 

日が高くなり、飛べるようになるまで、

 

蝉たちはじっとしている。

 

『ジージー』 

 

掴んだときは、ちょっと抵抗したけど、

 

手のひらに乗せると・・・ 『なんだ、なんだ?』

 

 

生温かい止まり木を散策し始める。

 

 

「なんて、美しい生き物なんだろう・・・・」

 

 

触角をピンと張って、彼女もわたしを感じている・・・

 

蝉と目が合う・・・ まあるい つぶらな瞳。

 

 

「生きているときは、目がこんなに赤いんだぁ・・・」

 

 

彼女の記憶には、

 

人間というものを どう収めたのだろう・・・?

 

丸太へ降ろすと、

 

ふわふわした指の方がいいなぁとばかりに 手を伸ばしてきた。

 

『もう、行っちゃうの?』

 

 

「うん・・・これから朝ごはんなんだ。

 

今日も晴れるといいね。いっぱい 謳えるといいね」